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香川にある世界トップクラスのものづくりの現場

  • 株式会社マキタ
  • 2021.12.28
  • 香川県高松市他

「マキタは、香川より海外の方が、名前を知られているかもしれないですね」

インタビューの中でふと漏れた一言。「地方には魅力的な仕事がない」という声はよく聞かれる。確かに仕事の数が少ないのは事実だが、魅力的な仕事が世間に伝わっていないことも多い。株式会社マキタも、そんな十分に魅力が伝わっていない会社のひとつだと思う。

マキタは、小型船舶用エンジンの世界トップのメーカーであり、90%以上の社員が香川県高松市で働きながら、世界基準のものづくりを実践している。さらに、エンジンという重厚な商材を扱いながらも、環境負荷の低減等の社会のニーズに対応したり、IT化やデジタル化等の社会変化にも対応したり、しなやかさ・スマートさも持ち合わせた企業だ。

今回、マキタのものづくりを最前線で支える設計部の山本さんと、マキタのIT化やデジタル化の一翼を担う山﨑さんに話を伺った。

 

〈インタビュー相手〉

山本 翔太(やまもと しょうた)さん:株式会社マキタ 設計部 基本設計グループ。エンジンの性能調整業務を担当。

山﨑 裕貴(やまさき ゆうき)さん:株式会社マキタ 情報企画部。社内の情報システム担当。

 

(お話を伺った山本さん(左)と山﨑さん(右))

(お話を伺った山本さん(左)と山﨑さん(右))

 

――幼少期の興味からエンジンについて学び、今はエンジンの製造を支える

香川県高松市出身の山本さんは、高等専門学校と京都の大学院で機械工学を学び、卒業後にマキタに入社した。エンジンに幼少期から興味を持っていたという山本さんにとって、マキタの仕事は天職かと思いきや、意外にも最初は香川で働くことはあまり考えていなかったという。

山本:高松の中でも田舎の兼業農家の家庭で、幼少期から農機具に触れる機会が多かったんです。そこで機械に、特にエンジンに興味を持つようになりました。電源につながっていなくても、エンジンがあれば機械が自走できるのをすごいと感じて。高専と大学院でもエンジンの研究をしていました。

実は最初は香川に帰ってくることはあまり考えていなかったんです。県外の自動車メーカー等への就職を考えていたのですが、就職活動中に父が体調を崩してしまって。長男だったこともあって実家をかえりみず好きな仕事のために県外に行くよりも、実家や家族を大切に考えるようになり、香川に帰るという選択になりました。

マキタには高専時代に1度会社見学で来たことがあり、船舶エンジンをつくっていることは知っていたので、香川県内で就職するならここだなと思いました。ただ、できればエンジンの研究開発の仕事に携わりたいと思っていましたので、自社で研究開発を行わずライセンス生産を行うマキタでやりがいを持って働けるかということは正直少し不安に感じていました。ただ、今となっては船舶用のエンジンに携さわる仕事にして良かったと思っています。ご存知の通り、多くの自動車メーカーは将来的にエンジン開発を止めていく流れの中で、船舶はまだエンジンが主流です。船舶エンジン専業のマキタは、エンジンに携わり続けられますし、ライセンサの研究開発テストに協力する機会もあるので、今となっては良かったのかなと。自動車メーカーのエンジンの研究職の人は、今では全然違う分野を担っている方も多いと思うので。

 

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(お話を伺った山本さん)

 

(山本さんの業務中の様子)

(山本さんの業務中の様子)

 

――東京で働くことに明るい未来を見出せなかった

香川県多度津町出身の山﨑さんは、高等専門学校と東京の大学で情報工学を専攻し、在学中にマキタのインターンを経て、卒業後にマキタに入社した。都市部の満員電車を目の当たりにして、東京で働くことにあまり良いイメージを持てなかったと語る。

山﨑:私の場合は、山本の機械やエンジンに当たる部分がパソコンやゲームになりますね。父がパソコンやゲームが好きで、物心ついたときはそれらが目の前にある環境でした。いろいろと触れることで興味を持ち、高等専門学校、大学と進み情報工学を学びました。

香川で働くことの印象についてですが、私は逆に、東京で働くことにあまり明るい未来を見出せなかったんです。大学の研究室に入ってすぐの頃、金曜22時頃に電車に乗ろうとすると、人を押し込まないと入れないような満員電車を初めて見て。東京の友達は慣れたもので、無理やり人を押し込んで乗車したんですが、僕は「これはちょっと乗れないな…」と感じてしまって。朝晩満員電車での行き帰りは自分にはできないと思ったんです。そこから、香川は住み慣れているし、災害も少ないし、親の近くに住んだ方が良いとも思い、地元香川で就職しようと考えました。

マキタは、大学で香川のインターンシップ受入企業を探す中で知りました。学んでいた情報工学とエンジンには深い関係はありませんが、香川にどんな企業があるのかを知りたいという意図があり、内容は情報系でなくとも良いと思っていたので、マキタのインターンシップに応募しました。2週間程の長期のインターンシップで、会社の雰囲気や社員の人柄の良さを体感し、得られたものも大きかったので、応募を決めました。

当時はマキタ以外にインターンシップの募集があまりなく、マキタのインターンシップに出会わなかったら香川に戻らなかった可能性もありますね。香川は東京と比べるとどうしても情報系の募集が少ないため、東京から少し離れた関東圏の企業を選んでいたかもしれません。

自分は学生時代の専攻や適性を見てもらい、今社内システムエンジニアとして仕事をさせてもらっていますが、学生の頃は社内システムエンジニアという仕事をほとんど知らなかったんですよね。流れてきた要件に従ってプログラミングをして、ソフトウェアを制作する。そんなソフトウェアエンジニアの仕事をイメージしていました。そうなると香川では候補となる企業があまり思い当たらなかったんです。

 

(お話を伺った山﨑さん)

(お話を伺った山﨑さん)

 

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(山﨑さんの業務中の様子)

 

――山本さん・山﨑さんがそれぞれマキタで担う業務

山本:今は設計部でエンジンの性能を調整する業務を担当しています。船舶のエンジンは、燃料消費率(燃費)がお客様との契約事項になっているんです。契約通りの燃費になるように、また排ガス規制等をクリアできるように、ひとつひとつのエンジンのパーツを調整する業務です。チームのメンバーは、私と後輩2人で、後輩たちはまだ経験が浅いため、今は自分が実務のほとんどを見ていますね。

エンジンは汎用品を売るのではなくて、船舶に対してエンジンの仕様を色々変えられるので、ほぼオーダーメイド・一品一様なんです。また、船は海上で動かなくなると漂流や転覆につながる可能性があり、船舶用エンジンには非常に高い信頼性が求められます。そのため、商談の初期の段階から設計チームや性能調整チームが関わることも多いです。

入社後に印象に残っている業務は、世界初号機のエンジンをマキタで製造する際に行った、デンマークから来た技師との大々的な研究開発テストですね。そのテストの社内調整役を務めたのですが、初めての設計で従来の設計と大きく違うところがあり、組み立て自体がかなり大変で、その場で技師の急な変更要望等にも対応しながら、何とかテストを成功することができました。デンマークの技師の方たちと技術者同士のつながりが生まれ、その後はプライベートで一緒にドライブに出かけたり、デンマークに行ったときは家に招待してもらったり、この経験は非常に大きかったと思います。

山﨑:先ほど社内システムエンジニアという話をしましたが、情報企画部という部署で、社内のIT関係全般の管理・運用支援を行っています。業務で使うパソコンやスマートフォンの管理、ネットワークの管理、また他部署の事務作業効率化のためのプログラム設計等幅広い業務を担っています。また「企画」と部署の名にある通り、情報企画部では管理業務だけではなく企画業務として、社内プロジェクトの企画・支援等も行っています。例えば、私が過去に担当したものとして、新しいソフトウェアの導入を社内の複数部署巻き込んで進めるプロジェクトがあります。プロジェクトメンバーには様々な部署の方が選ばれるため、皆さんが通常業務とのバランスを損なわないよう、慎重に計画策定や進捗管理を行う必要があります。

印象に残っている業務は、社内の基幹システムの入替え後、アフターサービスの部門の負荷解消に取り組んだ業務ですね。システム変更後の業務への影響が大きかったため、上司に部署に行って直接解決するよう言われ、その部署に私の席が用意されました。最初はただ事務作業の手助けをしてこい、とだけ言われていましたが、業務の流れを理解していくうちにプログラムで自動化できそうな箇所を見つけたんです。そのため、上司の許可を得て業務に適した自動化・効率化プログラムを作成することになりました。2ヶ月丸々使って一つの案件に取り組んだ経験は初めてでしたが、非常にやりがいのある仕事でしたね。受入部署の方と協力しながら作成したプログラムは、概算ではありますが年間2,000時間以上の工数を削減しています。部署の方と親交を深められただけでなく、大きな業務改善につなげられた、とても良い経験でした。

 

(工場での作業風景)

(工場での作業風景)

 

(工場の様子)

(工場の様子)

 

――マキタが持つ“人”の強み

話を聞く中で、山本さんと山﨑さんから共通して語られたのは、マキタという会社の「人の良さ」だった。山﨑さんはインターンシップから一貫して感じ続けたと言い、山本さんも社員同士や現場との距離の近さが強みだと語ってくれた。

山﨑:様々な人と関われることが1番のやりがいになっていると思いますね。ずっとエンジンと向き合っている山本さんのような方や、例えば営業のスペシャリストの方や、社内にいる様々な方と関わりながら自分の知らない知識をアップデートできるのは楽しいです。

マキタは社員の人柄が良い、雰囲気が良いんです。話しやすく、優しい人が多く、社内サークルもあって、仲の良い会社だなと常々感じています。インターンシップのときから感じていましたし、入社後の印象も変わらないですね。社内政治のようなものもなく、部署間でも本音で話す文化なので、素直な人の方が向いていると思います。

山本:設計でも困ったときは先輩社員が助けてくれますし、現場の人も無理を頼んだりしても何だかんだ助けてくれて頭が上がりませんね。若い人も多く話しやすいですし、また若い人でも大きな仕事を任されることが多いので、若い内からどんどん裁量を持って仕事をしたいという人には良い環境だと思います。言われたことをやるのが好きな人よりは、自分で考えながら動ける人の方が合っているのかなと思いますね。

山﨑:任せてもらえたことをやりがいに感じられる人の方が楽しく仕事ができる環境ですね。あと、マキタは東京に営業所はありますが98%程の社員は高松にいて、現場もすぐに行ける距離にあるので、現場を知らないのはもったいないですね。好奇心があって、貪欲に知識を吸収できる人はそれが強みになると思います。

山本:設計と製造現場が近いのはものすごいメリットだと思います。徒歩数分で現場に行ってコミュニケーションができますし、他社ですと同じ構内でも設計の事務所から現場まで自転車で何十分かかるというところもあるので。

あと、入社して感じたのは、思っていたよりグローバルな会社だなと。エンジンのライセンスを持つのはデンマークの企業なので頻繁にやりとりがあり、船は世界中を航海し、所有者も海外の方が多いので、国内よりも海外の知名度の方が高いと思います。

 

(社内でコミュニケーションをとる山本さんと山﨑さん)

(社内でコミュニケーションをとる山本さんと山﨑さん)

 

(空から撮影したマキタの工場・社屋)

(空から撮影したマキタの工場・社屋)

 

――マキタが見据えるこれからの進化

マキタはこれからもエンジンの世界トップメーカーとして邁進していく。ともすると変化が難しい重厚長大な製造業でありながら、社会ニーズの変化やIT化やデジタル化に、しなやかかつスマートに対応しながら、事業をさらに進化させていく。

山本:船舶のエンジンも脱炭素の流れは無視できないところです。今燃料は重油ですが、そこからガスへ、さらにその先には水素やアンモニア等も考えられるはずで、さらに厳しくなる排ガス規制も含め、今後は社会変化や進化する技術の流れに対応するエンジンの製造に取り組みたいですね。燃費もさらに良くしていきたいです。海上輸送は世界の貿易量の多くを占める重要なもので、信頼性が高く燃費の良いエンジンを供給し、海上輸送の安定に寄与できればと。今の部署で後輩に業務を伝承して育てながら、将来は人を動かせるようにもなって、それを実現していければと思います。

山﨑:直近でいうと自分で小さなプロジェクトをひとつ担当したいですね。自分も後輩がいるので育成しながら、データ分析やプロジェクト管理にも携わりたいです。上流工程に携われればと思います。

他のところで言うと、原価管理や生産管理を学びたいと考えています。ひとつひとつのエンジンをオーダーメイドで製造しているので、原価管理や生産管理の知識を深めれば、より製造コストを低減できるのではと考えていて。私自身は、スペシャリストよりもゼネラリストの方が向いているかなと思っていて、ヒト・モノ・カネ・情報の中で、情報は少しずつできるようになっているので、それ以外のところにも取り組みたいですね。

あとは四国の他の企業の情報システム部門の方々と業務改善やIT化の事例やノウハウを共有し合う仕組みやコミュニティもつくりたいです。個人的に情報システム部門の方が集まるコミュニティに参加して、進んでいる首都圏の事例から情報収集しているんです。例えば仕入先や取引先のIT化も支援したりしながら、情報共有等も通じて、地方や業界全体のIT化がより進めばと考えています。

会社全体で言うと、「物を売る会社からサービスを売る会社へ」という変化があると思います。鋼材価格が上がるだけで、積み重ねたコスト低減の努力が吹き飛ぶぐらいの影響を受け、業界の構造上自社で価格の上下を決めることが難しいのは製造業の難しいところで。それを克服するためには、エンジン本体を販売することに加え、修理のためのアフターパーツを販売したり、メンテナンスをしたりというアフターサービスに強みをつくっていく必要があると考えています。マキタが製造する世界基準のライセンスのエンジンは、世界標準なので部品も世界中に供給されていて、故障したときに世界各地で調達が可能で、利用者にとっては非常に大きなメリットがあります。ただ逆に言うと、アフターサービスはマキタではなく他社でもできてしまうので、差別化が必要です。補償の手厚さやスピード等のクオリティを高めたサービスを提供できるようにならないといけません。また例えば、製造したエンジンに、状態を常時管理できるセンサーをつけてリアルタイムで状態を把握できるようにしたり、IoTを活用したりデータ分析に注力したりすることで、マキタだからこそできるアフターサービスをつくりあげていけると思っています。最初からサービスを売る企業よりも、できることは多くあると思いますし、その点でITは不可欠になると思うので、そういう変化に関われる可能性を考えると楽しみでもありますね。

 

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エンジンの製造という重厚長大な産業において、事業を機動的に変化させることが難しいことは想像に難くない。にも関わらず、マキタは社会のニーズの変化や社会情勢の変化に対し、しなやかにスマートに対応し、事業を進化させている。そして驚いたのは、その変化を社員ひとりひとりが当たり前のことかつ自分ごととして前向きに取り組んでいることだ。現状維持だけではなく、常により良い形での変化を、山本さんも山﨑さんも自然と志向し続けている。マキタの魅力は「人」だと語った山本さんと山﨑さん。それは単なる人柄の良さだけではない。自分の領域で仮説を持ち、事業を常に変化・進化させる姿勢が社員ひとりひとりに浸透している。マキタが世界トップであり続ける強みは、その点も含めた「人」なのだと感じた。

 

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制作:四国経済連合会
取材:一般社団法人四国若者会議

 

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