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ものづくりは、場をつくり、関係をつくる

  • 白石 雄大さん|TEAMクラプトン / 株式会社四国食べる通信
  • 2017.01.07
  • 香川県高松市他

最近、自分の手で何かものを作ったという人はどのくらいいるだろうか。量販店やインターネットを通して何でも安価に買えてしまう便利な昨今、自分でものを作るという機会はめっきり減ってしまった。そんな時代に逆行し、ものづくりの価値を問い直すはたらきかたをしているのが白石雄大さんだ。

香川県高松市と兵庫県神戸市の二拠点で居住しながら、四国食べる通信の制作担当と内装業・イベント設営・装飾等を手がける5人のチーム「TEAMクラプトン」との二足の草鞋を履く。前者では、民家を改装してオフィス・カフェスペースをつくり、農園には骨組みに何と竹を用いたビニールハウスを制作した。後者では、オフィス・店舗・シェアハウス等の改装や、ファーマーズマーケット等のイベントの設営・装飾を手がける。

 

(白石雄大さん、地元の建築家と連携して施工した「四国食べる商店」にて=高松市出作町)

(白石雄大さん、地元の建築家と連携して施工した「四国食べる商店」にて=高松市出作町)

 

彼はただの内装業者ではない。その空間作りの最大の特徴は、ただつくるだけではなく、「施主といっしょにつくる」ことに重きを置いている点だ。施主の想いを汲み取った空間レイアウトを作成することはもちろんのこと、実際の作業工程に何と施主やその仲間も加わる。手を動かし、木材を切り、穴を開け、共に汗をかく。工程の一部を素人でもできるように事前に準備をすることで、施主やその仲間に工程の一部を担ってもらっている。ものづくりの工程に素人が参加するという、一見非効率的なことを行うのはなぜなのだろう。

「自分でものをつくったり、直したりできるようになることはとても『豊か』なことかなと。例えば、家を借りるときも、ここの壁を壊して、ここに自分で棚を作ったりできる。アパートで、些細なキズや汚れ・画鋲の穴などを気にする生活は窮屈に感じていた。ものがつくれれば、より自由に暮らせるし、より『暮らしがおもしろくなる』と思う」

「ものを実際につくる経験をすることで、簡単なことでもできることが増える。引き渡した後も壊れたら自分で直してみたり、自分で作業を試してみたり、『意外とものづくりができる』という意識の変化が生まれる」

ものづくりに触れてもらい、ものづくりを今まで全くやらなかった状態から精神的な変化を生む。ものやサービスを“消費”するだけの状態から少しの意識の変化を生む。これが、施主といっしょにつくることにこだわる理由のひとつだ。そしてまた、ものづくりをいっしょに行うことの価値はこれだけに留まらないとも言う。

「いっしょにつくることによって“場”ができる。場の持つパワー・魅力はものすごく大きい」

ものづくりによって「場がつくられる」こと。工程を人に解放することで、人が集い・共創し、更に完成した空間にも愛着を持った人が集う。ものづくりが単なる制作の域を超え、人を惹きつける“場”が生まれる。

「ものづくりをいっしょにすることで、長時間の関わりが生まれ、施主や仲間との深い関係性が生まれる。ものづくりという長期間の共有体験は強烈。いっしょに仕事をした人とはその後も縁が繋がっていることが多い」。

完成した空間をただ引き渡すだけではこうはいかない。ものづくりをいっしょにすることで、場が生まれ、人が集い、共有体験ができ、人との強い関係性が生まれる。これこそが、彼らがいっしょにものをつくることを大切にする最大の理由だ。

「『お店を作りたい』等の想いを持った人が、その夢を実現するための(サポートする)仕事のひとつだと思っている。熱い想いを持った人といっしょにいるとワクワクするし、何より自分はその熱い想いに弱い」と言って笑う。

 

(完成したシェアハウスの内装=大阪府大阪市)

(完成したシェアハウスの内装=大阪府大阪市)

 

(前写真の施工前。換気扇の位置から位置関係が見てとれる)

(前写真の施工前。換気扇の位置から位置関係が見てとれる)

 

(完成したシェアハウスの内装)

(完成したシェアハウスの内装)

 

(施工中の様子=兵庫県尼崎市)

(施工中の様子=兵庫県尼崎市)

 

これからの展望としては、とにかく「もっとつくりたい」とのこと。つくればつくるほど、自分達のスキルは向上し、新しい場が生まれ・関係が生まれ・ものがつくれる人が生まれる。例えば、結婚式のプロデュースや木工合コン(木工制作体験を通した合コン)など、新しい展開もワクワクしながら語ってくれた。

「ものづくりと言う場づくり」。彼らの活動が、ものづくりの持つ価値・可能性を問い直してくれた。

 

 

 白石雄大さん|TEAMクラプトン / 四国食べる通信

愛媛県今治市出身。
大学3年時、当時空き家だった「シンカイ金物店」を 住居として再利用するため、仲間1人と共に改修。暮らしながらイベント等を企画し、人が集まる場として運営。
現在は四国食べる通信制作担当(四国食べる商店を施工)/TEAMクラプトンメンバーの 二足の草鞋を履き、香川県高松市/兵庫県神戸市の二拠点で居住。

 

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