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これからの建設の新しい「スタンダード」をつくる

  • 株式会社技研製作所
  • 2018.12.04
  • 高知県高知市他

建設工事で不可欠な材料である「杭」。建物の基礎や土を留める擁壁、水をせき止める止水壁など、実は私たちの身の周りでも大活躍している。
そうした「杭」を地面に打ち込む際に、従来の工法とは異なる「圧入原理」による杭打ち工法を実用化したのが技研製作所だ。杭打ち工事による振動と騒音が建設公害として社会問題となる中、「圧入原理」を用いた無振動・無騒音の杭打ち機「サイレントパイラー」を開発した。圧入原理を用いた杭打ちは、公害を発生しないだけでなく、粘り強い構造物を構築する技術として、防災や都市再生の分野での利用が広がっている。
今回、技研製作所の2名の社員の方からお話を伺う中で、単なる圧入機のメーカーとしての役割に留まらず、「建設のあるべき姿」を社員ひとりひとりが追求し、「建設の新しいスタンダード」を生み出そうとする、技研製作所の壮大なスケールの物語と企業の高い志を感じることができた。

 

(お話を伺った西森さん(左)と林さん(右))

(お話を伺った西森さん(左)と林さん(右))

 

――転職のきっかけ、なぜ技研製作所だったのか

西森:18歳で高知県を出て、奈良県で就職しました。当時は就職活動をしたというよりも、学校が勧める就職先にそのまま就職した形です。ずっと高知が好きだったので、いつかは帰ろうと思っていました。3年前に結婚し、相手も高知出身だったため、それがUターンするきっかけになりました。前職時に一級建築士の資格を取得していたので、その資格を生かせる就職先を高知で探し始めました、最初は設計事務所等を考えていたところ、高知県のU/Iターン就職支援室(現:(一社)高知県移住促進人材確保センター)を通じて技研製作所から面談希望の連絡がありました。技研製作所の名前は知っていましたが、「機械メーカー」のイメージがあり、建築を希望する私は就職先の候補として考えていませんでした。しかし、ホームページ等を見て事業内容のおもしろさに惹かれ、建築士の需要もあることを知り、面接を受けました。
前職は小さな工務店で、施工管理等を行っていたので、工事も手がける設計事務所ならばそれなりに仕事はできるだろうとも考えましたが、転職するなら今の自分の力でできそうな仕事を選ぶよりも、より良い刺激を得られそうな仕事に就こうと考え、技研製作所を選びました。
現在は、エコパークや建築物の設計・管理を担当しています。直近では、本社のエコパークの設計・デザインから工事管理まで手がけました。入社半年という早い時期にも関わらず、重要な仕事を任せてもらえたことで、大きなモチベーションになりました。
あとは、高知に戻ってみると、食べ物がおいしいと感じています。また、アウトドアをはじめ遊びに行くところが多いと感じます。

 

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(建築技術課でエコパークの設計から工事管理まで担当する西森さん)

(建築技術課でエコパークの設計から工事管理まで担当する西森さん)

 

――技研製作所の事業は、マーケットインでもプロダクトアウトでもない、「ソサイエティイン」

林:技研製作所で働いていて感じる特徴は、「自流独創」、人に言われるのではなく、自分たちで考えてやっていくところです。圧入機メーカーとしても、建設の新しい工法を開発するところでも、最初に「こうあるべき」という姿を見定め、市場に左右されるのではなく、原理原則に基づいたものをつくるという事業の進め方が、他社とは大きく違うところです。技研製作所はマーケットイン・プロダクトアウトどちらでも無くて、「ソサイエティイン」。社会が求めているもの、世の中に役立つものはこれだと自分たちで考えてつくり出している点が特徴です。
技研製作所入社前に、首都圏で何度か転職を経験しました。広告代理店にいたときはクライアントが喜ぶものをつくり、商社にいたときは様々なメーカーの商品を伝えるツールをつくっていました。しかし次第に、自社でつくった商品を、自分の力で広げていきたいという気持ちが生まれ、「メーカーで働きたい」と考えるようになりました。

 

(情報企画課で企業のPRや情報発信を担当する林さん)

(情報企画課で自社のPRや情報発信を担当する林さん)

 

――技研製作所の圧入原理・インプラント工法の特徴・強み

林:圧入で打つ杭は、他の工法で打つ杭より地盤との親和性が高く、地球と一体化した強靭な杭構造物ができます。また、災害復旧や防災関連の面では、早く工事ができるというメリットがあります。通常の工法の場合、機械を設置する仮設のステージをつくる工事が必要となりますが、当社のシステムの場合、杭を打ちながらその杭の上を軌道として全てのシステム機器が進んでいけるので、省スペースで仮設工事もいらず、早く施工できます。
また、インプラント工法でつくる構造物は、逆の工程で杭を引き抜くだけで現状に戻せます。2車線の道路をつくった後に、交通量が増えて3車線に拡充したいとなった場合も、杭を打ち直すことで柔軟に対応できます。逆に交通量が少なくなった場合には2車線に戻すことも可能です。必要な期間にだけ必要な機能を提供する機能構造物としての役割を果たすことができます。

 

(「圧入」による杭打ちの原理)

(「圧入」による杭打ちの原理)

 

(杭を打ちながらその杭の上を軌道として機器が進むGRBシステム)

(杭を打ちながらその杭の上を軌道として機器が進むGRBシステム)

 

――技研製作所が向き合う、社会の現況

従来の工法と比べてメリットも大きいように感じられる「圧入原理」による杭打ち工法だが、普及拡大を妨げる要因もある。その最大の障壁が、建設業界の古い慣習や新しい技術を受け入れにくい風土だ。

林:土木工事は公共事業が主となりますが、発注者である国や地方公共団体の考え方として、従来の工法や前例を踏襲する傾向が強いので、良い技術だからと言ってすぐ採用されるわけではありません。河川堤防を例にとると、河川法という明治に制定された法律の下、堤防は土砂でできているという前提があり、鉄の杭を堤防内に打つこと自体が法律に馴染みません。つくっては壊れ、また直しては壊れということを繰り返していては、堤防等の防災インフラは、いつまでたっても国や地方公共団体の財産として蓄積されません。工事の目的が何なのか、工事の方法はどうあるべきかについては、社会インフラを享受する国民の視点で考える必要があります。これまでの慣習にとらわれない判断基準や文化自体を高めていきたいと考えています。

西森:一般的に建物を建てる際には、地中にコンクリートや鋼管の杭を打ち建物の基礎をつくります。ただ、現在建設中の高知本社の新社屋の基礎は、杭を打たずに鋼矢板で締め切り、液状化を防ぐ「拘束地盤免震」という技術を採り入れました。しかし、このような基礎を採用したいと建設業者に言うと、今まで設計した経験がないことから「うちではできない」と断られることもあり、難しさを感じました。
建築技術課のひとつの使命は、科学的な裏付けをもって原理原則に照らし合わせて、建築基準法を変えることです。社長の北村もずっと言っていますが、法律と戦うこと。法律が古いのなら、法律を変える、その使命があります。

林:当社は、建設のあるべき姿・原理原則・科学を追求しています。その中で、10年前に圧入学会を立ち上げました。当社が一方的に主張しているのではなく、科学が示していることを伝えていきたい。課題は、技術や工法への賛同者をどう集めるかというところですね。広報・普及活動の中で担当者レベルでは理解してもらえるものの、「建設業界」という全体の中ではなかなか浸透が遅い面があります。一方で、当社の売上が年々伸びていることから、賛同者は着実に増えているとも感じます。

 

(高知海岸での杭打ちの様子=高知県高知市)

(高知海岸での杭打ちの様子=高知県高知市)

 

――技研製作所が、今後注力すること

林:これまでもそうですが、技研製作所は「建設のあるべき姿」を常に追い求めていきます。それを具現化するために、従来のメーカーとしての動きだけに留まらず、社会全体を見据えた上で、構造物自体の企画・設計から、杭材の開発、施工、完成した構造物の維持管理までをトータルにパッケージ化し、提案していくことを進めています。当社はそうした開発に特化し、各国でそれぞれの分野の核となる企業等と提携し、世界中に展開していこうとしています。

 

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(技研製作所が開発するサイレントパイラー)

(技研製作所が開発するサイレントパイラー)

 

――高知県を「圧入のメッカ」に

林:当社の事業は開発がベースになるため、会社の拠点は都会である必要はありません。また、高知は昔から台風や地震の危険性が高いため、防災に対する意識も高く、県も先進的な取り組みを理解しているので、事業を行いやすい場所です。当社は自社では工場を持たないファブレスメーカーであり、その協力体制を世界にも広げていこうとしている中、高知だろうと東京だろうと、それほど大きな影響はありません。加えて、当社は創業の地が高知ということもあり、社長の北村も高知を大事にしています。また、高知を「圧入のメッカ」にするという経営方針を持っています。従来はこちらから海外やお客様の元へ出向き、営業担当が説明を行っていましたが、お客様に一箇所に集まっていただき、実物を見て体感してもらう形が効果的であると考えています。様々な場所に拠点があるより、高知に根ざし、そこでしっかりしたものを見てもらえる施設をつくることが大切だと考えています。

 

(技研製作所本社の社屋=高知県高知市)

(技研製作所本社の社屋=高知県高知市)

 

――技研製作所が描く未来像

西森:この会社で働くに当たり、「原理原則を科学で証明していかないといけない」という部分について、自分の力はまだまだ及んでいません。しっかりと勉強し、科学的に実証できるような経験を積んでいきたいと考えています。技研製作所の建築分野を伸ばすことで、圧入の技術を建築の分野に普及させていきたいです。

林:会社の方針として、「企業に天井をつくらない」ということがあります。どこまでも会社を大きくしていくべきだという経営者の考え方は変わりません。海外売上を7割にするという長期目標があり、今後もグローバルに成長・拡大を続けていくのは間違いありません。また、建設現場はこれから自動化や無人化が進みます。構造物のつくり方も、いずれは科学に沿った方法になるのは間違いありません。少しずつやり方を変えることで、国民の建設に対する考え方自体も変わっていくはずです。発注の形態や維持管理の方法も含め、建設業界の当たり前と思われている部分を変え、魅力ある新しい建設のスタンダードを創っていきたいと考えています。

 

 

●技研製作所の採用ホームページはこちら

https://www.giken.com/ja/jobs/

 

制作:四国経済連合会
取材:一般社団法人四国若者会議

 

四国へ就職・転職し、ご活躍中の皆さんへのインタビューを通じて、
四国の企業やUIJターンに関する情報をお届けします。

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