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自然の中で最先端の働き方ができる「地方創生」を体現するまち

  • えんがわオフィス(株式会社プラットイーズ・株式会社プラットワークス・株式会社えんがわ)
  • 2021.11.22
  • 徳島県名西郡神山町他

川のせせらぎが間近に聞こえ、木々の緑が映えるのどかな風景。町内に電車の駅はなく、最寄駅までは車で40分、バスも1時間に1便あるかないかで、コンビニは1軒だけ。まちのある古民家の扉を開くと、リノベーションされた屋内に、最新のIT機器や通信環境が揃う。そんなアンビバレントな場所が、今回紹介する徳島県神山町の「えんがわオフィス」だ。

 

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(神山町の風景)

 

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(えんがわオフィスの外観)

 

「地方創生」という言葉で、思い浮かぶまちはどこだろう。
持続可能な地域づくりを掲げ、都市部の大企業と連携しながら地方での人づくり・教育事業に力を入れる島根県海士町。森林等の自然を活用したローカルビジネスの創出に取り組む岡山県西粟倉村。日本中に様々な形で地方創生を体現するまちがある。
四国において、この文脈で真っ先に語られるのは、徳島県神山町だろう。光回線の普及が進んだ徳島で、先進的なIT企業のサテライトオフィス誘致を進め、田舎で都会と変わらない仕事ができる環境をつくり、移住者の受入施策も工夫を凝らしてきた。2023年には私立の高等専門学校「神山まるごと高専」の設立が予定され、若者がITや地域資源を活用した大小様々なプロジェクトを生み出している。2020年には転入者数が転出者数を上回り、人口が社会増に転じた。

今回紹介するえんがわオフィスは、そんな神山町で2013年に設立した。テレビ等の放送・配信関連の事業を行う株式会社プラットイーズ・株式会社プラットワークスのサテライトオフィス、映像制作の事業を行う株式会社えんがわの本社の機能を有している。

えんがわオフィスで働く、大道竜也さん・髙橋理恵さん・石川拓也さんのお三方に話を聞いた。えんがわオフィスでは、地方ながら都会と変わらない仕事、都会とはまた違う豊かさを持った最先端の働き方ができると語る。

 

〈インタビュー相手〉

■ 大道 竜也(だいどう たつや)さん:株式会社えんがわ ビデオグラファー。徳島県のPRムービーの制作、インタビュー映像の制作等、様々な映像制作を担当。

■ 髙橋 理恵(たかはし りえ)さん:株式会社プラットワークス 広告編成サービス部 EPGチーム。テレビの各チャンネルの番組情報のシステム登録を担当。東京での有事の際に対応するため、東京のチームに所属して業務を行う。

■ 石川 拓也(いしかわ たくや)さん:株式会社プラットワークス 業務運行サービス部 映像素材チーム。テレビ等の編成管理・システムの運用や管理を担当。

 

※株式会社プラットイーズと株式会社プラットワークスと株式会社えんがわ

株式会社プラットイーズから、2020年4月に株式会社プラットワークスが分社化。テレビ等の放送・配信関連の事業を行い、プラットイーズ社がシステム制作や営業の役割を担い、プラットワークス社が実際のシステムを運用する役割を担う。
また2013年に株式会社プラットイーズが神山町にサテライトオフィスを設立し、徳島の案件や映像制作等を行う株式会社えんがわを設立。えんがわ社は4K・8K等の高精細映像、ドローンやVRや360度映像の制作、地域イベントの企画等を行う。

 

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(お話を伺った大道さん(左)と石川さん(中)と髙橋さん(右))

 

――三者三様の参画の経緯、そこから見える仕事を選ぶときに大切にしているもの

大阪出身の大道さんは、映像とは全く畑違いの仕事から、地縁のない神山にIターン転職し、えんがわでビデオグラファーとして働いている。

大道:えんがわで働くまで、ずっとダンスを仕事にしていたんです。高校卒業と同時に東京に出て、アーティストのライブにダンサーとして出演したり、振付をしたり、海外に行ったりしていました。映像制作の経験はほとんどなく、所属していたチームのダンスを撮ったり、インストラクターもしていたので生徒を撮って映像制作して見せたりという程度でした。

元々神山に知り合いがいて、地方創生やサテライトオフィスについての話は聞いていたんです。転職で映像制作の仕事をしたいと考え、えんがわ社の話も聞いていたので、その知り合いに電話すると、たまたま隣に社長がいて。電話を替わってもらって、話をして、そこから面接・内定とトントン拍子で話が進み、神山に移住しました。

移住前の徳島や神山への印象は、それこそ初めて訪れるまでは海外ぐらい漠然としたイメージしかありませんでした。失礼な言い方ですが、田舎だろうなと。実際訪れても、山や川に囲まれてのどかなところだなと思いました(笑)。

ただそれよりも、県外から移住された方がどんどん新しいことを立ち上げて活気があるところが魅力的で印象に残りました。これまで仕事をしたのは都会ばかりで、都会で仕事をするイメージしかありませんでしたが、神山は田舎でも仕事の内容は都会と変わりません。新しいプロジェクトがどんどん立ち上がっているのはおもしろいですし、自然の中で都会と変わらない仕事ができ、働く場所を限定しないという考え方がいいなと思い、移住の決め手になりました。

 

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(お話を伺った大道さん)

 

石川さんは神山町の出身で、大阪の映像制作の会社から、同じ領域での転職を志し、神山にUターンして、プラットワークスに参画した。テレビ番組の編成管理とシステム運用を担当している。

石川:神山町出身で、高校は徳島市内に通い、大学は大阪の芸術大学に進学しました。大学で映像制作に触れ、2年程大学で働いた後、大阪の映像制作会社で働きました。そこから転職を考えたときに、ちょうど神山で映像に関する新しい事業が始まるという話を聞いて、プラットワークスに転職しました。映像制作の仕事が良いと考えたのは、大学から培ったスキルを活かしたかったからですね。徳島に戻って仕事に就くか、大阪で別の映像関係の仕事に就くか、正直直前まで迷っていました。住み始めると、徳島にも映像関係の仕事がいくつかあることは分かりますが、当時の自分の知る範囲ではここしかなかったので、ここがダメなら大阪で探そうと考えていました。

 

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(お話を伺った石川さん)

 

髙橋さんは神山町の隣町の石井町出身。また畑違いの保育士の仕事から、海外の旅を経て、新しい挑戦を志し、Uターンでプラットワークスに参画した。テレビの番組情報のシステム登録を担当している。

髙橋:大学まで徳島県内で過ごして、保育士の資格を取り、隣の香川県高松市で10年間保育士として働いていました。やりがいのある仕事でしたが、定年までできるか不安に思ったこと、保育士という狭い世界しか知らないと感じたことで、10年を区切りに違うことにチャレンジしようと考えました。退職して、1年ほど海外を旅しました。様々なものを自分の目で見て、生まれ育った場所の良さを改めて感じるようになり、Uターンすることを決め、プラットワークスにご縁をいただいて入社しました。

海外を回った後に感じたことは、人並みかもしれませんが、やはり我が家・日本の良さだったり、都会よりも自然の多い穏やかなまちの良さだったり、家族や友人に恵まれ大切な人の側で暮らす豊かさだったり。それが徳島に戻ろうと決めたきっかけでした。また、最初は英語を習得して子どもに英語を教える仕事をしたいと思っていましたが、旅の中で年齢関係なく自分のやりたいことをされているたくさんの方に出会い、違うことをやってみたいという気持ちが湧いてきました。スキルもあまりない自分でもできる挑戦をいろいろ探しました。また入社前に4K・VR映画祭にも参加して、田舎でも世界とつながれる環境や仕事があることはとても魅力的に感じましたね。

 

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(お話を伺った髙橋さん)

 

――神山・えんがわオフィスの環境が持つ魅力、都会との違い

それぞれ異なる境遇や想いを持って神山というまちに来て、えんがわオフィスで共に働いている。改めて、神山、えんがわオフィスという環境が持つ魅力や、都会で働いていたときとの違いについて聞いた。

大道:仕事の内容は都会と同じだと思いますが、環境は違いますね。実際に住む方との関わりが深いこととか、車で通勤できることとか。歩いていると誰でも挨拶をしてくれるのは、都会ではない経験だと思います。都会にあるお店がないのは不便に感じることもありますが、今はインターネットで買い物ができるのでそこまで不便に思うことはないですね。

石川:一歩外に出たら自然があるというこの雰囲気が全然違いますね。あと、自分が神山を離れている間に、いろいろとお店ができたり、「神山って活気があるよね」と言ってもらえるようになったことに驚きました。移住者の方と交流したりイベントしたりということは、以前はあまりなかったと思います。

えんがわオフィスは転職者が多く、それぞれの経験が違うので、スキルがあるのはもちろんですが、個性的でおもしろい人が多いですね。

髙橋:自分のペースで自律的かつ穏やかに仕事をされる方が多いのかなと思います。同じ環境で過ごす仲間として、穏やかに働けています。

大道:確かに、仕事で東京に行くと、オフィスはピンと張りつめている感じで、こちらは常に比較的リラックスしている感じです。そこのギャップは感じますね。高校生がオフィスのすぐ近くまで来たり、地域の人とすぐに関わる距離にあるのもおもしろいなと思います。

 

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(えんがわオフィスでの仕事中の風景)

 

――神山のまちで働きながら見据える未来

神山、えんがわオフィスの環境に豊かさを感じていると語る3人。ここで暮らし・働きながら、どのような未来を思い描き、どのようなことを目指し、実現したいと考えているのだろう。

髙橋:田舎であっても都会の仕事に対応できるようになっているので、東京での有事の際に自分がカバーすることで会社に貢献できればと思います。神山に住む者としては、野菜や花の苗を売りに来てくれる高校生がいたり、2023年に神山まるごと高専ができたり、神山が未来ある子どもたちの場になっているので、職業体験や交流を通じてその学びの下支えができればと思います。

石川:確かに、神山出身者として、地域に貢献したい、縁を大切にしたいという想いは強いですね。

業務の話でいうと、ミスがない形での放送を維持することですが、より簡単でミスが出ないシステムを構築していきたいですね。今自分が担当しているのはテレビ番組の編成ですが、放送業界全体のための新しいシステムや環境を会社として構築・運用したいと考えています。

髙橋:石川の言うことは私も目指したいです。この地域にいる限りは、業務内外で地域の方や新しく移住された方、新しく入ってくるものを敏感に受け止めて、神山の地域に貢献したいですね。

大道:4K・VR徳島映画祭が、毎年この神山で開催できていることは、神山に貢献できていることなのかなと思います。神山は世界からも注目されているので、映画祭による貢献はとてもやりがいを感じますね。自分の場合は移住者なこともあり、国内国外問わずインタビューを多く受けてきました。SNS等で連絡をいただくことも多く、神山への注目を感じます。

業務では、これからVRやライブ配信が増えてくると思うので、撮って編集するという枠を越えて、多様な需要に応えていける会社になれればと思います。ただ、目標を決めてしまうとつまらなくなってしまうんですよね。5年前にここで働くイメージもなかったですし、自分のイメージにないものができることがおもしろいと感じてここを選んだこともあるので、良い意味で予測できないことができると良いのかなと。

 

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(えんがわオフィスで業務に向き合う)

 

――神山というまち、えんがわオフィスに魅力を感じる人へ

最後に、神山というまち、えんがわオフィスという場所に興味を持った人のために、この環境にどのような人が合うか、話を聞いた。

石川:個人でも仕事ができるような自律した方が向いていると思います。スキルというよりは、気持ちの面ですね。仕事を全体的に捉えて、自分から提案していけるような方が、この会社では仕事をしやすいのかなと思います。

大道:都会と違った環境を求めている人はいいかもしれません。虫が苦手な人はダメかもしれませんが(笑)。業務的には、撮って編集するという映像制作だけではなく、その前段階の企画を考えるのが大切な作業なので、ゼロからイチを生み出すことが苦痛に感じる人は難しいかもしれません。ルーティンワークではなく、生み出す仕事なので。あとは、人と関わらないといけない環境なので、その向き不向きも大切だと思います。

髙橋:興味があれば、向き不向き考えず、1度神山に来ていただければ感じることがあるかなと思います。その上で、柔軟性がある方が良いと思いますね。入ってみて「思っていた仕事と違う」となったときでも、そこに楽しさを見出したり、置かれた環境で自分にできることを考えられる方が合うと思います。地域の方とは頻繁に関わるので、それが好きな方が良いと思いますね。

 

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「地方創生」の最先端と語られることも多い神山町。都会とはまた少し違う価値観が大切にされ、育まれている場所だと思う。都会は人や産業や情報が集積し、様々な刺激を得ることができる。一方、価値創造のためにいろいろなものを削ぎ落とし効率化が進む環境でもある。神山は、都会と比べいろいろな面で選択肢は多くない。しかし、日々の暮らしで子どもから高齢者まで多様な方と近い距離で接し、まちの変化もリアルに感じ、五感もしっかり使いながら、都会と遜色のない仕事をする。都会で価値創造を図るよりも、効率だけを見ると良くないかもしれないが、ひとりの人として手触り感を持った生き方ができる環境ではないだろうか。今回話を聞いた3人の言葉に「豊かさ」を感じた人は、きっと神山の環境が合うのだと思う。そして神山での仕事や暮らしをおもしろがれると思う。
それぞれのまちに色とりどりの個性がある。都会に追従するだけではなく、画一的ではない形でそれぞれのまちが豊かさを育める。神山は、そんな地方の未来の最先端をいく場所だと感じた。

 

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制作:四国経済連合会
取材:一般社団法人四国若者会議

 

四国へ就職・転職し、ご活躍中の皆さんへのインタビューを通じて、
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